一ノ矢八坂神社の御祭神は、素戔嗚尊ですが午頭天王とも呼ばれ、日本では京都の祇園社(八坂神社)に除疫神として祭られたのが始めてでありました。
神社の創建は、平安時代の前期で今から一千百有余年前の清和天皇貞観年間とされております。以来今日まで、この神社のお祭りは、祇園祭として五穀豊穣・無病息災等の祈願として執り行われてきたものです。
午頭天王は除疫神として信仰されたので、その祭りは疫病の流行する夏に行われ、茨城県における天王信仰の中心となり「一ノ矢の天王様の祭りが済まないうちは、自分たちの祇園祭は行わない。」とか「県内の祇園祭は、一ノ矢の天王様に始まる。」とか言われてまいりました。特に祭りの時に疫病除けに効力のあるニンニクが魔除けとして神社から頒布され、また境内にはニンニクの露店が立ち並ぶので、「ニンニク祭り」と呼ばれ広く一般に知られております。
ニンニクは、尊が朝鮮にお渡りになり採鉱・冶金・植林・医薬品等について学ばれた多くの技術や木種と共に、薬用の効力に優れた霊力があるものとしてお持ち帰りになられたもので、その後病気・病難祓除の強精剤として賞用されたと云う遺風が現在まで伝承されているものと信じられております。
実際の「ニンニク祭り」の定着は、江戸時代中期に起きた、天明の大飢饉の時に疫病が蔓延したが、当時の地域の領主であった、堀田対馬守がこの神社の「ニンニク」で多くの人をお救いしたという逸話が伝えられておりますが、以後当神社の祇園祭には、病厄難を祓い清める「ニンニクお守り」が御霊蒜としてはんぷされ、その御利益の信仰により「一ノ矢八坂神社の祇園祭」が「一ノ矢八坂神社のニンニク祭り」と呼ばれるようになったものと思われます。
祇園例大祭は、毎年旧暦6月6日、夕刻からの宵宮祭に始まり、6月14日早朝の還幸祭までの期間続きますが、いわゆる「ニンニク祭り」として賑わうのは、最近では6月7日1日だけとなっております。
祭日には、境内に所狭しと色々のお店が張られます。早朝より茨城県内はもとより、関東一円から参拝にこられる方々も大勢おられます。
神社では、色々な御祈祷・御祈願をお受けするのは勿論、御神札・お守り等と一緒に清祓・御祈祷を済ませた「ニンニクお守り(御霊蒜)」を頒布いたしております。
多くの参拝者はこの「ニンニクお守り(御霊蒜)」をお持ち帰りになり各々の御家庭の戸口・玄関等に吊り下げて、御家族御一家の家内安全と無病息災を御祈念されるわけです。
強烈な臭いと、薬として、また香辛料としての抜群の効力により、悪しきものから人間を守る抜群の力を持つと信じられている「にんにく」は、たしか「ドラキュラ」も苦手だったのではないでしょうか。
国内では、青森県の弘前市郊外に御鎮座しております{鬼神社」の名物は「ニンニク市」だと云われております。
当神社のお祭りは、深い信仰に根ざした、病気・厄難祓除祈願の「ニンニク祭り」国内では他に例のない独特な祭りであります。